モロッコのトラベルテック分野は、フィンテックなど他のスタートアップ分野に比べるとまだ発展途上にあるものの、少しずつ勢いを増しています。SMIT(Société Marocaine d’Ingénierie Touristique:モロッコ観光エンジニアリング公社)や国連観光機関(UN Tourism)なども支援をしており、近年は、観光体験のデジタル化、ゲーミフィケーション、食文化、文化遺産、持続可能な地域観光といった分野で、新しいサービスや取り組みが生まれ始めています。例えば、Beyond The Mapは、観光情報、移動、安全、予約などを一つの画面で利用できるウェブアプリを提供しています。アプリをダウンロードせずに使用可能で、旅行者の行程をサポートする「旅の伴走者」のようなサービスとして、モロッコの観光体験のデジタル化を後押ししています。Beyond The Mapのほかにも、Mossika、Nuitée、Userguest、Wanautといったスタートアップが登場しており、旅行者の体験をより便利で豊かなものに変える可能性を示しています。こうした企業の成長は、モロッコを現代的で体験重視の観光地として発信していくうえでも重要な役割を果たすと期待されます。ビジネスエンジェルやベンチャーキャピタルは、投資先としてこのような観光分野のスタートアップを積極的に探しており、2024年の大型資金調達の中にはホテル流通インフラを手がけるNuitéeや、ホテルの直接収益を高めるUserguestが含まれています。しかし、投資家にとって魅力的だと判断されるスタートアップはまだ限られており、多くの場合、市場ニーズの検証、収益化、販路開拓、資金調達後の事業運営などに支援が必要とされています。この状況は、日本企業や日本の関係機関にとっても、モロッコとの協力を広げる好機となり得ます。特に、ホスピタリティの品質向上、デジタル観光、顧客体験の改善、地域観光の振興、持続可能な観光地づくりといった分野では、日本の知見や経験を生かした連携の余地があります。