ケニアの首都ナイロビでは、現金に代わってデジタル決済やモバイル決済を利用する動きが急速に広がっている。こうした「キャッシュレス社会」への移行はアフリカでも特に先進的な事例として知られており、その中心にあるのがモバイル送金サービスM-Pesaである。ナイロビでは、デビットカードやクレジットカード、デジタルウォレット、インターネットバンキング、QRコード決済、非接触型決済など、さまざまな電子決済手段が利用されている。しかし、その中でも圧倒的な存在感を持つのがモバイルマネー、なかでもM-Pesaだ。M-Pesaは2007年にVodacomとSafaricomによって開始され、現在では日常生活に欠かせない決済インフラへと成長した。とりわけ新型コロナウイルス感染拡大期には、政府が接触機会の低減を目的としてキャッシュレス決済を推奨したことが、モバイル決済の普及をさらに加速させた。バスや乗り合いバン(マタツ)などの公共交通、小売店、各種サービス分野で現金以外の支払い手段が広がり、行政手続きでもe-Citizenプラットフォームを通じたデジタル決済が進められた。一方で、キャッシュレス化の進展に伴い、課題も顕在化している。M-Pesaはナイロビの金融取引を大きく変革し、デジタル経済の拡大を支えてきた半面、データ漏えいや詐欺被害といったリスクにも直面してきた。これに対し、Safaricomは送金時の電話番号表示の工夫や受取人確認機能の強化など、セキュリティ対策の改善を進めている。こうした対策は、不正送金や誤送金の防止につながるものとして期待される。ナイロビのキャッシュレス化は、ケニアが持つ高いモバイル普及率と、生活インフラとして浸透したM-Pesaを背景に進んできた。今後もセキュリティ強化や関連サービスの多様化が進めば、同国のデジタル経済はさらに広がりを見せる可能性が高い。ナイロビの事例は、アフリカにおける都市型金融の進化を示す象徴的なケースとして、今後も注目されそうだ。