先日、9月17日(木)・18日(金)の2日間にわたり、東京・浜松町の東京都立産業貿易センターで「海外ビジネスEXPO2026東京」が開催された。同イベントは、海外展開を検討・推進する企業と、海外ビジネスを支援する企業や公的機関などが一堂に会する展示会で、東京では例年秋に開催されている。弊社は2022年から同展示会にブースを出展しており、今年で5回目の参加となった。これまでは、海外ビジネス支援企業や公的機関によるブース出展が中心であったが、今年は新たな試みのひとつとして「大使館エリア」が設けられ、駐日モンゴル国大使館と駐日ケニア共和国大使館が出展した。アフリカからの出展については、運営を担う株式会社Resorzから弊社に、どの国の大使館に出展を依頼するのがよいか相談があり、弊社から、日本企業の進出が活発化しているケニアが適しているのではないかと提案した。その後、駐日ケニア共和国大使館に出展いただくこととなった。当日、駐日ケニア共和国大使館のブースは多くの来場者でにぎわい、ケニア市場に関心を持つビジネスパーソンが大使館職員から説明を受けたり、意見を交わしたりする姿が見られた。一方、弊社ブースを訪れた方々のアフリカビジネスに関する関心や相談内容にも、2025年までとはやや異なる傾向を感じた。昨年までは、「アフリカとはどのような市場なのか」、「どのようなビジネスチャンスがあるのか」といった、未知の市場としてのアフリカに期待や関心を寄せる方々が圧倒的に多かった。しかし今回は、すでにアフリカでビジネスを行っているものの、何らかの課題に直面しており、その解決策を求めて弊社を訪れる方が目立った。あくまで弊社ブースでの限られた経験ではあるものの、日本企業のアフリカビジネスに対する関心が、「アフリカで何ができるのか」という段階から、「アフリカでどのように事業を進め、直面する課題をどのように解決するのか」という、より実践的な段階へと移りつつあることを感じさせる機会となった。振り返ってみると、日本においてアフリカを成長市場として捉える機運が一段と高まったのは、2010年代初頭であった。当時、アフリカ市場は「ラスト・フロンティア」と呼ばれることも多く、豊富な資源や人口増加、高い経済成長率などを背景に、将来性のある市場としてメディアでも大きく取り上げられるようになった。その後、固定電話など従来型のインフラの普及が十分に進まない一方で、携帯電話が急速に普及したアフリカでは、モバイルマネーをはじめとする新たなサービスが次々と生まれた。2010年代後半になると、既存の発展段階を一足飛びに越えて新しい技術やサービスが普及する「リープフロッグ」の代表的な地域として、アフリカが語られる機会も増えていった。実際、アフリカにおける日系企業の拠点数を見てみると、2010年の520拠点から、2015年には687拠点、2019年には910拠点へと着実に増加した。その後、新型コロナウイルスの感染拡大などの影響もあり、2020年には900拠点に減少したものの、2021年には927拠点、2022年には972拠点まで回復した。一方、2023年、2024年はいずれも948拠点となり、950拠点前後で足踏みする状態が続いた。この動きをどのように捉えるかについては、さまざまな見方があるだろう。ただ、筆者としては、「ラスト・フロンティア」や「リープフロッグ」といったアフリカへの期待が先行した時期を経て、日本企業が市場の可能性だけでなく、制度、物流、人材、為替、商習慣など、現地で実際にビジネスを行ううえでの課題と向き合う段階へ移ってきた時期でもあったように思う。そして2025年、アフリカにおける日系企業の拠点数は1,054拠点となり、初めて1,000拠点を突破した。2010年の520拠点と比較すれば、この15年間でほぼ倍増したことになる。もちろん、この数字だけをもって日本企業のアフリカビジネスが新たな段階に入ったと断定することはできない。しかし、少なくとも日本企業とアフリカ市場との接点が、長期的に見て着実に広がっていることは確かであろう。すでにアフリカへの進出を模索している企業も、これから検討を始める企業も、今や漠然と「成長するアフリカ」に期待するだけではなく、「どの国であれば、自社の事業を現実的かつ具体的に展開できるのか」を厳しく見極める時代に入っている。本コラムの冒頭で紹介した展示会において、弊社ブースを訪れる方々の関心が、アフリカの可能性そのものから、すでに直面している具体的なビジネス課題とその解決方法へと移りつつあるように感じられたことも、こうした変化の一端を示しているのかもしれない。では、アフリカ54カ国の中で、実際に日本企業から進出先として選ばれているのはどのような国なのだろうか。外務省の2025年「海外進出日系企業拠点数調査」によると、日系企業の進出拠点数が多い上位5カ国は、アフリカ有数の工業国である南アフリカ(266拠点)、東アフリカの経済ハブであるケニア(135拠点)、日本企業にとって伝統的な進出先のひとつであるエジプト(79拠点)、欧州市場へのアクセスにも優れるモロッコ(76拠点)、そして2億人を超える巨大な人口を抱えるナイジェリア(57拠点)である。このうち、日系企業の拠点数が最も多い南アフリカでは、2010年代前半に進出が大きく拡大し、2014年には280拠点、2017年には282拠点に達した。しかし、その後は伸び悩み、2017年の282拠点をピークとして、それを下回る水準で推移している。2023年には255拠点まで減少したものの、2025年には266拠点まで持ち直している。南アフリカで事業を行う日系企業にとっては、低成長に加え、物流を中心としたインフラ上の課題、人件費、黒人経済力強化政策(BEE)への対応コストなどが事業運営上の負担となっている。JETROの調査でも、こうした要因に加え、国内需要の減少などが撤退を検討する理由として挙げられている。一方で、2025年に黒字を見込む在南アフリカ日系企業の割合は76.2%と高い水準にあり、さまざまな課題を抱えながらも、依然として回答企業の多くが黒字を見込んでいる。南アフリカに次いで日系企業の拠点数が多い国がケニアである。ケニアの特徴は、新型コロナウイルスの感染拡大という厳しい時期を挟んでも、日系企業の拠点数が中長期的に増加してきたことにある。2019年には87拠点であったものが、2023年には118拠点、2024年には123拠点、そして2025年には135拠点へと増加し、現在では南アフリカに次ぐアフリカ第2位の日系企業進出先となっている。では、なぜケニアではコロナ禍を挟んでも日系企業の進出が続き、アフリカ第2位の進出先となったのだろうか。この疑問をひも解くため、弊社では今年12月10日(木)、駐日ケニア共和国大使館との共催により、東京・虎ノ門で「ケニアビジネスセミナー」を開催することとしている。同セミナーでは、駐日ケニア共和国大使館のモイ・レモシラ特命全権大使(H.E. Amb. Moi Lemoshira)にご登壇いただき、ケニアビジネスの魅力や最新のビジネス環境についてご紹介いただく予定である。また、アフリカ内外の物流に精通した物流会社から専門家を招き、近年の中東情勢や紅海周辺の航行リスクを背景とした国際物流の変化が、アフリカビジネスにどのような影響を及ぼしているのかについて解説いただく。さらに、すでにケニアでビジネスを展開している日本企業2社の実務家にもご登壇いただき、パネルディスカッションを通じて、実際に現地で事業を行っているからこそ見えてくるケニアビジネスの魅力や課題、そしてそれらをどのように乗り越えてきたのかについて、率直に語っていただく予定である。同セミナーについては現在、プログラムの詳細を詰めている段階であり、来月末をめどに詳細をご案内する予定である。アフリカ市場の可能性を知りたい方はもちろん、ケニアでの具体的な事業展開や現地で直面する課題への対応を検討されている方にも、ぜひご予定を調整のうえ、ご参加いただきたい。(JCCP M株式会社 杉野)